公開シンポジウム
教師教育の「質保証」を問い直す
~国内外の状況と今後のあり方を再考する~
9月8日(土)14:15~18:15・6210教室
趣旨
新世紀に入り、10年余りが経過したが、高等教育全般、とりわけ教師教育分野における「質保証」は、国際的及び国内的な主要課題の一つになってきている。変化の激しい時代と社会の中で、それに対応する学校教育を担う教師に対する社会的要求はますます高度かつ多様になってきている。同時に、近年では、大量の退職と採用という世代の大幅な入れ替えが起こりつつあり、これまで蓄積してきた経験の継承とこれから必要とされる知識の獲得とが課題となってきている。
そうした状況は、日本のみならず国際的な課題ともなってきており、教師教育の「質保証」をめぐる研究的議論と政策的取組とがすでに活発に行われてきている。国際的には、OECDが、2002~2004年にかけて「優れた教員の確保、育成、定着(Teachers Matter : Attracting, Developing and Retaining Effective)」プロジェクトを実施し、また2009年には「教員・教授・学習を取り巻く条件に関する初の国際比較調査(Teaching and Learning International Survey:TALIS)」を実施してきている。質の高い教育を維持し提供するための重要な条件・要素としての教員への関心が高まってきている。各国が、重要な政策の一つとして教師教育改革を位置づけ、教師教育の高度化、教師の専門性の向上策が図られている。
国内的にも、養成及び現職教育の内容・方法・制度にかかわる改革が盛んに取り組まれており、とりわけ「質保証」は主要な改革テーマの一つとなっている。中教審での政策的論議とともに、教職大学院のみならず広く学士課程段階における教員養成の評価システムと基準作り、養成及び現職段階における「質保証」基準としての「スタンダード」の設定、英米等諸外国の事例を参照しての「教師の専門性基準」の設定などが、各大学等様々なレベルで取り組まれ、案として提起されてきている。また各大学において、独自に様々な質の維持・向上のための多様な取り組みが行われてきている。こうした中で、養成教育段階における最終的な「適格性」判断の機会としての新規教職科目「教職実践演習」も本格的実施が目前に迫っている。
私たちは今、こうした「質保証」の動向が、教師教育における開放制の原則とそれに基づく多様性の保障を尊重する方向で取り組まれることが重要であると再確認すべきである。様々な具体化が始められている今こそ、これまでの「質保証」の取り組みを、上記基本原則を再確認しながら、原点に立ち返って問い直し、質の高い学校教育実現のための教師の働く環境整備、教師の成長を支え促すシステムづくり、そのための評価システムや基準のあり方などの基本方向について、ともに議論していきたいと思う。